【レポート】 世界初 Jリーグクラウドメディアセンターの全貌 #AWSメディア業界シンポジウム #AWSSummit
はじめに
清水です。2017/05/30(火)に行われましたAWS Summit Tokyo 2017 Day1 Dive Deep Day AWSメディア業界シンポジウム「世界初 Jリーグクラウドメディアセンターの全貌」のセッションレポートになります。
本セッションはパネルディスカッション形式で行われました。スピーカーは岩貞 和明 氏(株式会社Jリーグメディアプロモーション プロモーション事業部 部長)と河田 恭裕 氏(株式会社 イマジカ・ライヴ メディア・企画局 局長)、ホストは北迫 清訓 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 技術統括本部 メディア・エンタテインメントソリューション部 部長/ソリューションアーキテクト)です。
Jリーグは今年からプロフェッショナルスポーツとして世界で初めてクラウドベースのメディアセンターを運用し始めているということで、その経緯や構成なども聞くことができ、大変興味深いセッションでした。
レポート
今回のJリーグの取り組みについて
新・国内放映権契約
- 今年からイギリスのパフォームグループと10年2,000億円の契約
- Jリーグととし譲れないものを交渉。その1つがJリーグが制作著作権を持つこと
制作著作権と中継制作
- それまでスカパーさん
- 昨年までの映像の著作権はTV局さんにある
- そのため自由に使えなかった
- 今年からは、すべての制作著作はJリーグとして持つ
- そのために中継制作をJリーグをで行う必要がある
- Jリーグデジタルという会社をつくった。
映像のデリバリーとアーカイブ
- クラウドメディアセンターはなぜ必要だったか
- どうつくって、どうデリバリーするか、が大切だった
Jリーグメディアセンターに求められる役割
- Jリーグ年間全1,043試合を集約、アーカイブ
- J1, J2, J3
- 現在はルヴァンカップを除く
- 全試合は東京の一箇所にに集められる、映像信号はIP(H.264)
- これまではSDI映像信号
- パフォームというOTT業者なので、IP
- 映像種類は3種類
- クリーン映像
- 得点表示などCGなし、実況なし
- ダーティ映像
- 得点表示などCGあり、実況あり
- スカウティング映像
- クラブが戦術分析などに使用するもの
- クリーン映像
- 集まった映像をリアルタイムにニーズに応じて変換してデリバリー
- キー局、全国の放送局、データスタジアム(試合のパフォーマンスデータ)、57クラブ、審判部
- 将来、4K対応、VAR(ビデオアシスタントレフリー、リプレイシステム)リーグ戦以外の映像への拡張、デリバリー数の増加に対応可能なこと
- 海外、国内のライツホルダーへの中継用映像の分岐
- パフォームさんとは、国内の放映権契約をしている。海外は別の会社
クラウドメディアセンターの内側
- 提案当初はクラウドでできると考えていなかったので、オンプレミスシステムで提案
- コスト面、数億円の上のほう
- オペレーション、かなりの人がかかる。数億円の半分より少し下の提案
- オンプレなので、場所の確保が必要
- ハード買って、構築して、工事して...が検討が必要
- コスト、スケジュール面、厳しそう
- クラウドでできないの?の一言でクラウドを検討
- クラウド業者さんに声をかけて、AWSさん、エレメンタルさんに相談にのってもらって進める
- Jリーグクラウドメディアセンター構成図
- 各スタジアムからIP網でデータセンターへ
- データセンターからフルマッチアーカイブ同録システム、これはオンプレ
- DXでデータセンターから、TSライブ入力。AWS ELEMENTAL CLOUDへ
- リアルタイムDL+mp4化。ニュース分岐。放送局用
- 各クラブ向け ビデオクリップ作成
- ShareCast簡易クリップ作成ツール使用
- クラブさんが自分たちでクリップ作り、自分のホームページでクリップ公開
- データスタジアムさんにはタイムラグ無しで、TS転送
- Real time Stats入力
- CG作成につながっている
- これまではスカパーの放送みて、入力していた。
- DAZNは1分弱の時差があるので、それを解決するために、リアルタイムでみるのでTS転送
- BBCでも使っているMedia Shuttle。映像配布システムに使っている
- 1,043試合あるけど、年間で90日しか稼働しない
- 土日だけ稼働するようなシステムにしている
- 落ちたときにどうする?
- ここがダメだったらこの映像使う、というようなコピーが数分で終わる
- 昨年の8月、9月から、半年ぐらいでこの規模のシステムをつくった
- マネージサービス、エレメンタルを使ったこと、既存製品をつかったこと
- クラウドっぽく使いこなしている。90日以外は電源OFFのような
クラウド利用への懸念と克服
- 世界で初めてのチャレンジ
- バックアッププランの明確化
- PDMCAの考え
- Jリーグ改革ではPDCAのど真ん中に「M(ミス)」を据えた。PDMCA
- チェアマンの考え、チャレンジを恐れずにおこない、そのフォローをする
- バックアッププラン
- キー局のニュース配信が重要。
- いろいろなエラーがあって、例えば配信システムが使えずに地方まで直接とどける、とかはあった
- システムエラーはある程度は想定
- 三重、四重のバックアップ
- ミスが起きてもバックアップして対処するのは、クラウドでも一緒
- Design of Failure
- システムの観点、業務の観点からも
- パートナー含めた実績のあるサービスラインアップ
- AWSチームによるサポート
- 提案がまだ通っていない段階から紳士にサポートいただいた ー 仕様が幾度も変わる中で常にサポートしてもらっていた
- タイトなスケジュール内での構築スピードと柔軟性
- コスト削減
- 場所
- 年間の3/4はいらない。90日のみ稼働するシステムという特性
- 実際のコストメリット
- 1/5ぐらいの金額規模
- オペレーションも去年とほぼおなじ人数。映像増えたりニュース分岐もあるのに
- システムかわって機能も増えたが、同じ人数でまわせている
- トラブル起きれば人もいらなくなるのでは?
- 人も含めてコスト削減できた
今後の期待と展望
- 試合映像のアーカイブ
- 今はオンプレ環境だけど、クラウドへの移行も検討
- 過去素材の再利用性の向上
- 93年からの映像をクラウドにうつして再利用したい
- プラットフォームの水平展開
- サッカーだけでなく地域スポーツにも、このシステムを使いたい
感想
Jリーグについて、今年から放送がスカパーからDAZNに変わるということは知っていたのですが、背後にあるメディアセンター自体も変化しており、そしてそれがクラウドベースになっていることに驚きました。しかしクラウドでも問題なく稼働し、また放送局さんや各クラブさんと連携することもできているとのことで、今後もますますこのような事例が増えていくのではないでしょうか。